後藤コーヒーファーム7月|猛暑の脇芽摘みと木酢液散布、チェリー35個で1杯の重み
南阿蘇・後藤コーヒーファームを7月に訪問。猛暑の中で行った脇芽摘みと木酢液散布、オーナーツリーの着果、寒暖差と糖度、コーヒーチェリー約35個で1杯になる重みを記録します。
目次
この記事でわかること
- 夏のコーヒーの木の手入れ(脇芽摘み・木酢液散布)の実際
- なぜ脇芽を摘むのか — 光と風通しと病害虫の関係
- 阿蘇の寒暖差とコーヒーの実の糖度の話(後藤さんに教わったこと)
- コーヒーチェリー約35個で、ようやくコーヒー1杯になるという現実
梅雨明けの農園へ — 猛暑の中の作業
7月11日、梅雨明け後の南阿蘇・後藤コーヒーファームを訪れました。熊本市内では最高37℃の予報が出ていた日です。気象庁アメダス(南阿蘇)の最高気温は30.7℃でしたが、農園の屋外温度計は35℃、ハウス内のデジタル温度計は33℃を示していました。屋外温度計は、直射日光の影響で高めに出ていた可能性があるとのことです。
ハウス内は、覚悟していたほどの暑さではありませんでした。遮光ネットが直射日光を和らげ、風がある程度吹き抜ける構造になっているためです。とはいえ、作業中の水分補給は欠かせませんでした。この日は日差し対策としてサングラスも使用しました。農作業用としての使い勝手は、別記事で詳しく紹介する予定です。

ハウスに入ると、コーヒーの木の間に麦の束が吊るされていました。コーヒーだけでなくいろいろな作物を育てているのも、この農園の面白いところです。
この日は脇芽摘みや木酢液散布を行う中で、「コーヒー1杯には約35個のチェリーが必要」という話も教わりました。目の前の実を数えながら、普段何気なく飲んでいる一杯の重みを改めて感じた訪問になりました。
3年目のオーナーツリーの様子
私のオーナーツリー(3年目)は、前回の訪問から脇芽がぐんと伸びていました。

そして嬉しい発見も。小さい方の木にも、着果したように見える小さな膨らみがありました。まだコーヒーチェリーと断定できる段階ではありませんが、今後の成長が楽しみです。

作業1:脇芽摘み — なぜ摘むのか
この日のメインの作業は脇芽摘みです。
脇芽をそのままにすると、木の栄養がそちらに取られてしまいます。実をしっかり育てたい木では、余分な脇芽を摘んで、エネルギーを枝や実のほうへ向けてあげるのが狙いです(→脇芽摘みとすす病対策の記事)。
今回、後藤さんに教わって新たに知ったのは、光と風通しの面からの理由です。幹の内側に脇芽が増えると、葉が重なって実のなる枝まで光が届きにくくなります。さらに風通しも悪くなり、湿気がこもって病害虫が発生しやすい環境になるとのこと。そこで、中心部の余分な脇芽を摘んで、光と風が通る状態に整えます。

摘んだ脇芽は捨てません。持ち帰ってコーヒーリーフティーにします。摘み始めるとあっという間に袋いっぱいになりました。この続きは記事の最後で。
作業2:木酢液の散布 — 節の黒ずみ対策
梅雨の湿気で、節にすす病と思われる黒ずみが出ていないか心配していましたが、今回は予想していたほど多くありませんでした。それでも一部に黒ずみが見られたため、木酢液を水で約100倍に薄め、スプレーで吹き付けました。

散布には、ペットボトルに取り付けられるスプレーヘッド(100円ショップで購入可能)を使いました。
※100倍希釈は、今回、後藤さんに教わって農園で行った条件です。木酢液の濃度や使用方法は製品や植物の状態によって異なるため、使用時は製品表示や栽培者の指示を確認してください。

黒ずみ対策の詳しい経緯は、前回の脇芽摘みとすす病対策の記事にも書いています。
コナ由来の木 — 寒暖差と糖度の話
ハワイのコナ由来の木は、コーヒーチェリーがひと回り大きくなっていました。


後藤さんによると、大きい方の実は11月頃に収穫できそうとのこと。ただし、ここで面白い話を聞きました。
11月頃は寒暖差が少ない時期なので、実の糖度は上がりにくいだろう、というのです。逆に、阿蘇の冬を越してから収穫するコーヒーの実の方が、品質は良くなるだろうと。
果物で「寒暖差が甘さを作る」という話はよく聞きます。後藤さんのお話を聞き、標高が高く寒暖差のある阿蘇の環境は、コーヒーチェリーの成熟や甘みにとってプラスに働く可能性があるのだと感じました。もちろん、品質は品種や樹の状態、日照、収穫時期など複数の条件に左右されますが、「なぜ阿蘇でコーヒーを育てるのか」を考える興味深い視点でした。
数年先を見据えた「次の幹」
もうひとつ、印象的だったのが木の仕立ての話です。コナ由来の木では、現在の主幹から伸びる枝の収量が、将来的には落ちていくことが予想されるそうです。そこで後藤さんは、今後新しい主幹となる候補の枝を、あえて残していました。

農家は今年の実だけを見ているのではなく、数年先の世代交代まで設計しながら木を仕立てている。オーナーとして通っていなければ知らないままだった視点です。
7月の農園で見つけた小さな発見
花が咲いている木もありました。 数は少ないものの、白いコーヒーの花がまだ見られました。5月に一斉に咲いた時期(→開花と着果の記事)とは違い、木によって、枝によってタイミングがずれる。定点で通っているからこそ気づける光景です。

後藤さんが発芽させた今年の苗も、トレーいっぱいに育っていました。青々として元気です。

一方、私が植えたコーヒーの種は、まだ目立った変化がありません。カビが生えると発芽しにくくなるそうなので、祈るような気持ちで見守っています(→種まき記事)。
自宅栽培モデルの木も置かれていました。鉢植えで順調に育ち、十分に実が付けば、1本から焙煎豆換算で100g程度、1杯10gなら約10杯分を見込めることもあるそうです。

ただし、ここにも正直な現実があります。鉢植えの木に毎年実をならせるのは難しいそうで、後藤さんの管理例では、実を付けた後に根を切り戻して植え替え、翌年は結実よりも樹勢の回復を優先することもあるそうです。その年は実を付けなかったり、花が咲かなかったりすることもあるとのこと。また、これ以上鉢を大きくすると今度は移動が困難になるため、写真のサイズ感に収めているそうです。「家でコーヒーの木を育てて毎年自家製コーヒーを」という夢は、そう簡単ではないようです。それでも、自分の木から10杯分。憧れます。
コーヒーチェリー35個で、コーヒー1杯
この日、後藤さんに教わって印象に残った数字があります。
コーヒー1杯に必要なコーヒーチェリーは、およそ35個。(チェリー1つに豆が2つ入っている場合、1杯に約10gの焙煎豆を使う場合の目安です)
※チェリーの大きさや精製・焙煎時の歩留まり、1杯に使うコーヒー豆の量によって個数は前後します。ここでは、後藤さんに教わったおおよその目安として紹介しています。
目の前の枝になっている実を数えると、35個というのがどれだけの量か実感できます。毎朝なにげなく飲んでいる一杯の向こうに、35個の完熟チェリーと、それを育てた誰かの一年がある。自分の木のチェリーを見ながら、そんなことを考えた真夏の農園作業でした。
持ち帰った脇芽は、リーフティーへ
摘んだ脇芽は袋いっぱい。持ち帰って、葉を洗い、太い枝を取り除き、水を切ってから洗濯ネットに入れて日陰に吊るしました。
陰干しを始めた翌日には、洗濯ネットからハーブティーのような良い香りが漂っていました。
前回は生葉からリーフティーを作って妻に「うっ」と言われましたが(→脇芽茶の改善記録)、今回は乾燥させてから作ります。
まとめ|7月の農園で感じた一杯の重み
今回の訪問では、真夏のコーヒー農園で脇芽摘みと木酢液散布を行いました。
- 余分な脇芽を摘み、木の内側まで光と風が通るように整える
- 節に見られた黒ずみには、今回は約100倍に薄めた木酢液を散布
- コナ由来の木では、今年の実だけでなく次の主幹まで見据えた管理が行われていた
- コーヒー1杯には、目安として約35個のチェリーが必要
普段何気なく飲んでいる一杯の背景には、暑い日も続く農園の手入れと、数年先まで木を育てる人の判断があります。自分のオーナーツリーに付いた小さな実を見ながら、その一杯の重みを改めて感じた訪問でした。
持ち帰った脇芽は、今回は陰干ししてからリーフティーにします。生葉から作った前回との違いは、次の記事で詳しく記録します。