南阿蘇でコーヒーを育てる|10月、冬支度が始まる農園と成長するチェリー

南阿蘇でコーヒーを育てる|10月、冬支度が始まる農園と成長するチェリー

2026年10月25日、南阿蘇の後藤コーヒーファームを再訪。成長するコーヒーチェリーを観察し、冬のビニールハウスの温度・水管理や、阿蘇の草原野草を使った土づくりについて教わりました。


目次
  1. 台風に備えて閉じられたハウス|10月でも蒸し暑い
  2. 大きくなったコーヒーチェリー|開花時期による成長の違い
  3. 今回の脇芽摘み|黄色くなった脇芽も
  4. 気温が4℃でも、地温は違う|冬越しで大切な土の温度
  5. 冬のビニールハウス|毎日の開け閉めと週1回ほどの水やり
  6. 阿蘇の草原野草を敷き詰める|土を守る新しい取り組み
  7. 牛糞堆肥・鶏糞堆肥・米ぬか|農園の土づくり
  8. 草の下で育つ自然発芽のコーヒーの木|持ち帰りは冬を越してから
  9. もう一本のオーナーの木|順調な成長と今後の収量
  10. ビニールハウスにアナグマが侵入|農園ならではの悩み
  11. 10月の農園で感じたこと|南阿蘇でコーヒーを育てるということ
  12. 後藤コーヒーファーム訪問記シリーズ

10月25日、南阿蘇の後藤コーヒーファームを訪れました。9月13日の訪問から約1か月半ぶりです。

枝には緑色のコーヒーチェリーが連なり、ビニールハウスは翌日の台風に備えて側面が閉じられていました。コーヒーの木の根元には、前回はなかった阿蘇の草原野草が厚く敷き詰められています。

今回は、後藤さんから冬場の温度管理や水やり、土づくりについて詳しく教えていただきました。特に印象に残ったのは、コーヒーの冬越しには気温だけでなく地温も大切だということです。

これから冬を迎える南阿蘇で、コーヒーの木がどのように管理されているのか。今回も自分のオーナーの木の成長とあわせて記録します。

※記事中の「コナ由来のコーヒーの木」は、後藤コーヒーファームでそのように呼ばれている木です。品種・系統を特定したものではありません。

→ 前回の記事:南阿蘇でコーヒーを育てる|9月、再び咲いた花と秋を前にしたコーヒーの木


台風に備えて閉じられたハウス|10月でも蒸し暑い

10時頃、農園に到着しました。

翌日は台風の予報が出ていたため、普段は日中に開けているビニールハウスの側面が閉じられていました。風でコーヒーの木が倒れないようにするための対策です。

ハウスには遮光ネットが張られていますが、この時期の天井はビニールで覆われておらず、雨は中に入ってくる状態です。

台風に備えて側面のビニールを閉じたビニールハウスの内側。上部には遮光ネットが張られ、地面には草原野草が敷かれている

この日は曇り空でしたが、雲の隙間から日が差すと、側面から風が入ってこないため、ハウスの中は蒸し暑く感じました。南阿蘇のアメダスの観測では、この日の最高気温は27.1℃だったようです。


大きくなったコーヒーチェリー|開花時期による成長の違い

オーナーになっているコナ由来のコーヒーの木には、今回もたくさんの緑色のチェリーが実っていました。

左:コナ由来のコーヒーの木の枝に、房になって実る緑色のコーヒーチェリー。右:同じ枝に実る、大きく育ったチェリーとまだ小さいチェリー

同じ枝の中でも、早い時期に咲いた花からできたチェリーと、遅れて咲いた花からできたチェリーがあり、大きさに違いがあります。遅れて咲いた花からできたチェリーも、少しずつ大きくなってきていました。

前回の9月の記事では、遅い時期に咲いた花からできたチェリーは、気温が下がるまでに十分大きくならないことがあると教えていただきました。これから冬に向かう中で、どこまで育つのかが気になります。


今回の脇芽摘み|黄色くなった脇芽も

今回も、自分のオーナーの木の脇芽摘みを行いました。

脇芽は見られたものの、前回の訪問時よりも数は少なく、作業にもそれほど時間はかかりませんでした。

気になったのは、脇芽のいくつかが黄色くなっていたことです。

左:濃い緑色の葉の間に見られる、黄色くなったコーヒーの若い葉。右:枝先の若い葉の多くが黄色くなっているコーヒーの木

後藤さんによると、少し前に最低気温が4℃まで下がった日があり、その影響ではないかとのことでした。


気温が4℃でも、地温は違う|冬越しで大切な土の温度

最低気温が4℃まで下がったと聞いて、心配になったことがあります。

以前、気温が10℃を下回るようになると、次の花が咲きにくくなると伺っていたからです。しかも、現在は暖房も使っていないとのこと。翌年の着果への影響が気になりました。

しかし後藤さんによると、冬場の10℃と今の10℃は違うそうです。一時的に気温が下がっても、地温まで同じように下がるわけではないとのこと。今の時期は地温がまだ高いため、根は大丈夫とのことでした。

農園では地面に温度計を刺して、地温も確認しながら管理しているそうです。

私はこれまで、コーヒーの栽培では気温のことばかり気にしていました。根がある土の温度にも目を向ける必要があるということを、今回初めて知りました。


冬のビニールハウス|毎日の開け閉めと週1回ほどの水やり

冬になると、ハウスにはビニールを二重にかけて保温効果を高めるそうです。

ただし、日中は側面のビニールを開けないと、ハウス内の温度が高くなりすぎて木がダメになってしまうとのこと。そのため冬場は、毎日ビニールの開け閉めが必要になります。寒さから守るだけでなく、暑くなりすぎないようにすることも大切なのです。

また冬は、夏と違って天井もビニールで覆われるため、雨が降っても土に十分な水分が届かないことが多いそうです。そのため、1週間に1度くらい木に水をあげる必要があるとのことでした。

主要なコーヒー産地の露地栽培では、こうした温度管理は行われません。冬場の温度管理や水管理の話を伺い、南阿蘇でのビニールハウス栽培の現場を初めて具体的に知ることができ、とても勉強になりました。

ハウス栽培だからこそできること

一方で後藤さんは、ビニールハウスでは人が温度を管理できるため、寒暖差によっておいしいコーヒーができるのではないかと考えているようでした。

また、冬場の水やりを控えめにすることが、甘みのあるコーヒーチェリーの生育につながるのではないかと考えているそうです。ただし、水分不足が強すぎると木の生育に悪影響を与えるため、適切な水分管理が重要になります。

一方、冬の寒さが厳しくなるほど、暖房に必要な燃料費も増えます。近年は灯油の価格も上昇しており、燃料代の面では暖冬の方が助かるとのことでした。


阿蘇の草原野草を敷き詰める|土を守る新しい取り組み

前回の訪問から変わっていたことが、もう一つあります。コーヒーの木の根元に、阿蘇の草原野草が散布されていたことです。

コーヒーの木の根元に厚く敷き詰められた阿蘇の草原野草

後藤さんによると、野草には土壌の保温や保水、雑草の発生を抑える効果が期待できるそうです。また、野草が分解されることで土壌に有機物が供給され、微生物の活動を支えることにもつながるとのことでした。よりおいしいコーヒーを育てることにもつながるそうです。冬場の地温を高く保つのにも役立っているのだろうと感じました。

この野草の散布は、阿蘇の草原維持活動の一環でもあります。つまり、オーナーとしてコーヒーの木を育てることが、阿蘇の草原維持活動への協力にもつながっているようです。

南阿蘇で育てるコーヒーならではの、興味深い取り組みだと思いました。


牛糞堆肥・鶏糞堆肥・米ぬか|農園の土づくり

後藤コーヒーファームでは、牛糞堆肥、鶏糞堆肥、米ぬかを定期的に施し、農薬を使わずにコーヒーを栽培しているとのことです。

今回は、使っている堆肥も見せていただきました。

南阿蘇村有機肥料生産センターの発酵牛フン堆肥「牛若丸」の袋。成分分析の表示が見える

牛糞堆肥は南阿蘇のものを使っているそうです。後藤さんによると、牛糞堆肥は特に葉の成長に良いとのことでした。

袋の表示には、次のような成分が記載されていました。

項目表示内容
製造元南阿蘇村有機肥料生産センター
窒素1.46%
りん酸2.49%
カリ3.16%
pH8.20

※数値は今回撮影した牛糞堆肥の袋の表示によるものです。

農園で使われている「発酵ペレット鶏ふん」の袋

一方、鶏糞堆肥は花が咲く時期に特に良い肥料だそうです。一般に鶏糞堆肥はリン酸を比較的多く含むものもあり、リンは植物の開花や結実にも関わる重要な栄養素です。こちらはナフコで1袋数百円で手に入るそうです。


草の下で育つ自然発芽のコーヒーの木|持ち帰りは冬を越してから

8月の訪問で見つけた、オーナーの木の根元で自然に発芽したコーヒーの木も、元気に育っていました。

ただ、草原野草が厚めに敷き詰められていたため、最初はどこにあるのか分からないほど隠れていました。

左:草原野草の間からのぞく、自然に発芽した小さなコーヒーの木。右:草をよけて姿を見せた、自然発芽したコーヒーの苗

草を少しよけてみると、小さなコーヒーの木が姿を現しました。

後藤さんからは、この木を持ち帰ってもよいと言っていただきました。持ち帰ろうとも考えましたが、若い木は最初の冬を越すのが難しく、自宅よりも土壌や温度管理の環境が整っている農園のビニールハウスで冬を越してからの方がよいのではないか、とのアドバイスをいただきました。

そこで今回は持ち帰らず、冬を越してから自宅に持ち帰ることにしました。

6月に自宅で種を蒔いたコーヒーの木も、9月に発芽したばかりです。自宅の苗と、農園で自然発芽した苗。それぞれ違う環境で、これからどう育つのかも楽しみです。


もう一本のオーナーの木|順調な成長と今後の収量

もう一本のオーナーの木も、ストレスなく成長しているようでした。

左:ビニールハウスの中で育つ、もう一本のオーナーのコーヒーの木。右:もう一本のオーナーのコーヒーの木の上部。枝と葉の様子

その分、枝の節と節の間(節間)が長めになっています。

同じ長さの枝で比較すると、節間が長いほど節の数が少なくなり、チェリーが実る場所も少なくなる可能性があります。今後、どの程度の収量につながるのか気になるところです。

後藤さんの目標は、1本のコーヒーの木の枝を15〜20本ほどにして、1本あたりコーヒー1〜2杯分のコーヒーチェリーが採れるくらいの収量だそうです。

もう一本のオーナーの木の枝に実る、数粒の緑色のコーヒーチェリー


ビニールハウスにアナグマが侵入|農園ならではの悩み

前回の訪問から今回までの間に、アナグマがビニールを破ってハウスの中に入ってきたそうです。

今のところ実害はないようですが、入ってくるとハウス内に穴を掘ったりするため、対策をしているとのことでした。

侵入箇所にネズミ捕り用の粘着シートを置いたところ、シートがなくなっていたそうです。同じことが二度あり、それ以降はアナグマが侵入した形跡はないとのことでした。ただし、実際にアナグマに付着したかどうかは確認できていません。

コーヒー栽培の現場では、気温や水だけでなく、野生動物とも向き合わなければならないのだと知りました。


10月の農園で感じたこと|南阿蘇でコーヒーを育てるということ

今回の訪問で教わったことをまとめます。

  • 気温と地温は違う。 今の時期は地温がまだ高く、一時的に気温が下がっても根は大丈夫とのこと。
  • 冬のハウスは毎日の開け閉めが必要。 二重のビニールで保温しつつ、日中は温度が上がりすぎないように開ける。
  • 冬は週1回ほどの水やりが必要。 天井をビニールで覆うため、雨だけでは土に水分が届きにくい。
  • 阿蘇の草原野草で土を守る。 保温・保水・雑草抑制に加え、分解されて有機物となり、微生物の活動を支える。
  • 堆肥にも役割がある。 牛糞堆肥は葉の成長に、鶏糞堆肥は花が咲くときに特に良い。

これまでは、花が咲いた、チェリーが大きくなった、脇芽が伸びたといった、目に見える木の変化を中心に記録してきました。今回の訪問では、その成長を支える温度管理や土づくりなど、日々の細かな作業の大切さを知りました。

こうした取り組みを経て収穫されたコーヒーには、普段飲んでいる一杯とはまた違った思い入れが生まれそうです。

これから南阿蘇は本格的な冬を迎えます。大きくなってきたチェリーがどうなるのか。オーナーの木や自然発芽した苗が無事に冬を越せるのか。次回も、その変化を記録していきたいと思います。


後藤コーヒーファーム訪問記シリーズ

南阿蘇でのコーヒー栽培を、月ごとに記録しています。

→ 9月:再び咲いた花と秋を前にしたコーヒーの木

→ 8月:一か月で大きくなったチェリーと自然に芽生えたコーヒー